音楽とムチャと外れぬベルト ―ベルト故障切断事件―

その事件は2時限目、音楽の時間におきました。
出席番号は後ろから数えたほうが断然早い私。
その日の授業内容は文化祭のときに歌う歌を決めると言うもので先生が選曲15曲をかけていたのですが、私たちはまあ後ろのほうですので、となりにいたYくんやRくん、近くにHくんなんかとこっそり話したりしておりました。



そして、事件は起こりました。
Rくんが、突如ベルトをはずしたのです。(コレは事件ではありません、皆気づいてないし)
「変態かお前は!?」「え?普通やろ?」
何が普通なのかは分かりませんがそっから話が発展し「(今は別のクラスの)ザキヤマ駿が1年のとき堂々とここでチャックを開けた」という話になり、それを含めてYくんと笑っていたところ、Hくんが「おいY、シャツ出とるぞ」と指摘。
これをうけてYくんはズボンにシャツを入れるわけですが、まぁ座ってるので入れづらいわけです。
そこで彼はどうしたかと言いますと、ベルトをはずし(お前もか)、チャックを開けてシャツを入れたのです。
「お前もかよッ」「いや〜、こうせんと座ったまんまできへんけん」とかなんとかありまして、動機こそ忘れましたが、私は彼のベルトを思いっきり引っ張りました。



事件はこのとき起きました。



「うわぁキツイ、息しにくい」「んじゃゆるめれば?」
そういう成り行きでYくんはさすがにきつくしめすぎたベルトを緩めようとしたのですが、「アレ?・・・全然とれへん!」「マジ?」
どうやら思いっきりしめたときに中の金具が変になったようで(Yくんに比べると私のパワーは相当な弱体なのでYくんでもゆるめられないというのは中の金具に何かあったと考えるのが妥当)、Yくんでもゆるめられない状況に。
「おいヤベーぞマジで取れん」とあせるYくん。



家に帰ってからじっくり取り組めばええやん、とお思いの方、あながち間違いではありません、普通なら。
しかし、彼にはあせらなければいけないわけがありました。
それは、
「今日の体育どーしよ・・・。」
そう、今は運動会の準備真っ盛り。
当然毎日のように練習に強制的に駆り出される生徒。
そのさまははるか昔の中国や倭国の王が何かしでかすときに平民を扱う様と酷似しているような気もします。
とうぜん彼も生徒の一人ですから、授業に参加しなければいけません。
そのためには、このいまいましいベルトを取らなくてはいけません。
まったく、何処のどいつが発端の一因となったんでしょう?



しかし、我々は無情にも笑いながら高みの見物を決め込んでいました。
だって紆余曲折できつくしまったベルトを解こうとするYくん。
しかも先生や、ましてや女子に見つかってはなりません。
そのシュールさが不謹慎ながらも我らに笑いを与えます。
しかし、彼のベルトとの仁義もへったくれもない果てしなき闘いはチャイムが鳴っても終わることはありませんでした。
「お前のせいやろ!」「え〜?」
ああ、笑いが止まらない。
しかし、私は無情にも笑っているだけの能無し役立たず&外道ではありませんので、いくつか策を授けました。
1:まずシャツを出す(何のためにベルト閉めたのやら)
2:なにかペンとかをベルトとズボンの間に入れて奮闘する
3:今まで押していたものを、引っ張ってみる
などなど。



しかし、すべて「試してガッテン」してみたものの、あえなく失敗失敗大失敗。
んじゃーしゃーない、最後の手段だと言うことで最後の策を授けました。
4:授業が終わっても解除できなかった場合、石鹸水を作成して奮闘する



さぁ、最後の希望は石鹸水に託された!頼んだぞ、石鹸水!
というような内容のことを思いながら休み時間は「図書館危機」を読んですごす私です。



7分後・・・
Yくんと一緒にトイレに行って様子を見てたRくんが来て、「おい、失敗や」と言いました。



じゃあしょうがない、真の最終手段を使うときが来ました。
実は音楽の時間に半分冗談で授けていたのですが、(実際うすうす感づいてはいたものの)ホントに使うとはあんまし思ってはいませんでした。



?:どうしてもムリな場合、鋏でいったん切断してから家で接着剤で再び接着する
かなり荒療治ですが、方法はこれしか残されていません。
仕方ないので、ぼくが3歳のころ幼稚園から支給され、以来ずっと使っている(結構大きめなので今でも使えます)鋏を持ち、Yくんのもとへ。



果たして、彼とベルトの運命やいかに―――!?






















































じょきじょきじょき・・・
Y「あー苦しかった・・・」



解除成功!やったね!
こうして、「ベルト故障切断事件」は解決したのでありました。
この記事は実際に起こった日(金曜日)から翌日、翌々日(土日)にかけて書いたものなので、ちゃんと接着できるかどうかは心配ですが、電話が一本も来ないところを見るとどうやらうまいこといったようです。
そう思っときます。